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忘却オルゴール
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男は間もなく死のうとしていた。ある日、妻に尋ねた。
「あとどれくらい生きるかなあ」
妻は部屋の片隅に置かれた花瓶を指さし、
「あの水仙が枯れるまでは」
と答えた。男は花瓶に活けられた小さく白い花を見て「短いなあ」と笑った。
それから程なくして男は死んだ。
葬式の後、もっと良い嘘があったかしらと一人何度も呟く妻の視線の先に、小さく白い造花の水仙。
by asi384 | 2004-12-31 01:29